「それで最初の質問は……[名前を教えてください]ってことらしいけど」
「質問者って、殆ど、あなたの国の民でしょ? 知らないの?」 |

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「いえ……そんなことはないと思うのですけれど」
「公の場でしか使わないですけれど……流石にそれは……」
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「……そうよね。流石に王女として国民に名前を覚えられていないのは、
おかしいわよね」
「……ちゃんと、こうして質問書も来ているのだし」 |

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「けれど、今回は他の国の人にも紹介ということらしいから……」
「エルファリーナ王女。フルネームをお願いします」 |

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「あ、はい。わかりました」
「私のフルネームはエルファリーナ・メディーユ・ウル・ラングラーデです」
「長いので、皆さんのお好きなように呼んでくださっても構いません」
「王女と言うよりも、友達のように接して欲しいと思ってます♪」
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「もしかして……」
(慌てて、質問書の文面を見るリーゼ)
「やっぱり……」
「……これじゃ、フルネーム覚えられていないわけよね」 |

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「? 何かいけなかった……?」
「少しでも、国民に親しみを持ってもらおうと思ったんですけれど……」
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「……確かに、親しみは持ってもらえていると思うわ」
「充分過ぎるほど充分に」
「でも……そんなのじゃ、いつまでたっても名前覚えてもらえないわよ?」 (そう言って、エルナへと手紙を渡すリーゼ) |

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(手紙を受け取りながら、ゆっくりと文面へと目を走らせるエルナ)「まさか。流石にそれはないと思――」
「――え……。こ、これは――!?」
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――お手紙の内容一部抜粋――
●エルナ様のお名前を教えてください
●エルリーナ様のお名前を教えてください
●エルファ様のお名前を教えてください
●可愛い皇女様のフルネームを教えてください
●ファリーナ様のお名前をフルネームで教えてください
●エルファーナ様のお名前が知りたいです。
※全てラングラーデの国民達から
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「そんなっ……」
「エルファーナや、ファリーナなんて……」
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「……そんなにショックなら、もう少しラングラーデの王女として、
国民とは距離をとったほうがいいと思うけれど」 |

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「そ、それは駄目です!私は国民に身近に感じられる
あのセレスティナ様のようなお姫様になりたいんです」
「これだって、きっと悪気があってのことじゃないですし」
「それに、みんなが親しみを込めてくれるなら、私は何て呼ばれてもっ……!」
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「……そう。なら、これからずっとエルリーナでも、エルファでもいいのね?」 |

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「そ…それは……その…」
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「どうなんです? エルファリーナ・メディーユ・ウル・ラングラーデ様?」 |

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「こ、国民の、みんなが…親しみを込めてくれるなら、私は何て呼ばれても……」
「エルリーナでも、エルファーナでも、ファリーナでも……」
「大丈夫です……きっと……」
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「……冗談よ。だから、そんなに泣きそうな顔しないの」
「こうして質問が来るくらいだし……」
「そもそも、こうしてエルナが悲しんでいるのを知れば、貴方のことが大好きなラン グラーデの国民さんはきっと、一生懸命名前覚えてくれるわよ」
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「あ……リーゼ……。あの、ありがとう!」
(リーゼへと抱きつくエルナ)
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「きゃぁっ?! エルナ。ちょっと……離れて……っ」
「それよりもちゃんと、自分の口から言わないと。覚えてほしいのでしょう?」
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「あっ……そ、そうでした」
(さっとリーゼから離れるエルナ)
「――では、改めて。皆さん。その……出来ればエルナって呼んでくださいね」
「フルネームのほうも、覚えててくださると嬉しいです♪」
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「それにしても……[前から思ってたけれど]……エルナってちょっと変よね」
「……私のことじゃないから、どうでもいいけれどね」 |

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「な、何か酷いこといわれてるような……」
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「では、次の質問にいくけれど」
「……エルナの[出身地」の「ラングラーデ」について聞きたいらしいわね」
「とは言っても、おおよそのところは、●観光パンフレット●に記載されているので、
貴方の意見でお願いね……大丈夫?」 |

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「あ、はい。任せてください」
「これでも、ラングラーデの王女ですので、話すことと言えば――
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私の国で実施している、季節ごとの祭事のことだとか、名所につけられた名前の由来だとか、国王と王妃……あ、私のお父様とお母様の馴れ初めだとか、街で行われている、サービスデイの説明だとか、ここにしか生息しないと言われている、羽猫の説明だとか、それ以外にも……
(他つらつらつらつら×100)
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これくらいありますから。どれから話せばいいですか?
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「え、その……貴方が、どれだけこの国を愛しているかはわかったから……」
「だから、お願い。時間の都合もあるから、本当に軽く説明してくれる?」
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「……あ、はい。では、私の好きなパン屋のことを紹介させてもらいますね」
「その前に、ラングラーデは、セイフォール一の小麦の出産国で、
とても美味しいパン屋さんがいっぱいあるんですよ」
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「そうね」
「……セイフォール一と言うだけあって、この国のパンなどは、とても美味しいわ」
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「ふふ。でしょう?」
「私も通っているパン屋さんがあるんですけど本当にものすごく美味しいんですよ」
「焼きたてを売っているお店で、私が尋ねていくといつもサービスしてくれるんです」
「お金はいらないよって、とても親切なおじさんなんですよー」
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「……ちょっと待ちなさい。もしかして、貴方が、自分で買いに行っているの?」 |

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「え、そうですけれど?」
「やっぱり、自分でお買い物くらいは出来るようにならないとと思って」
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「……今度からやめたほうがいいわ」
「サービスっていっていたけれど、ただ王女からお金なんて取れないだけでしょう」
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「で……でも……。私が行くと喜んでくれますし……」
「何でも、私が来ることが、毎日の楽しみだって……行かないと次の日……」
「あの……泣いてしまわれることもあって……」
「私どうしたらいいか……」
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「それは……何ていうのか……とても素敵な、人ね」 |

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「はい♪」
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(王女が王女なら……国民も国民ってことなのかしら……)
(……ラングラーデの国の在り方に疑問を覚えたのは私だけ……?)
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「リーゼ。どうしたの?」
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「……いえ、何でもないわ。次の質問にいきましょう」
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「さて、……次の質問なのだけれど」 |

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「リーゼって、本当に淡々と進行していくよね」
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「任務だし。多少の冗談なども必要だとは思うのだけれど」
「……やっぱり、時間には限りがあるから」
「それで、次の質問なんだけれど……」 |

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「…………………え? 何故。こんなものまであるの?!」 |

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「どうしたの? 何て書かれてるの?」
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「……[スリーサイズ]を教えてくださいですって」 |

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「えっ……。リーゼどうしよう?!」
「突然スリーサイズって言われても……」
「私、そんなこと知らないし……計ったこともないし……」
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「そうよね。確かにそこまできっちり計るというのは……って」
「ま、待って。その言葉は、知ってれば教えるってこと?」 |

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「……だって、国民の質問は、受けるのが王族としての務めですから」
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「……本気?」 |

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「……本気ですけれど」
「でも、困りました……どうすれば……」
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(……この子どうしよう。私のことじゃなくても、流石に心配に――)
「って、エルナ?! 何、脱いでいるの!?」 |

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「え? その。わからないから、計ってみないとと思って」
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「だからって、そこで脱ぐことはないでしょう!」
「ちょっと、こっちに来なさい!」 |

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「え、ちょ、ちょっと、リーゼ?!」
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「いいから。脱ぐくらいなら、私が計ってあげる」
「ちょっと、そこで待ってなさい!」
「…………返事は?」 |

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「う、うん。わかった」
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